新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

新年一発目のブログは新しい年のはじまりということで保険のはじまりです。

むか〜しむかしヨーロッパのとある田舎村、貿易商人のビリー(仮名)という男がいました。ビリーはオリーブや葡萄、繊維、武器などを仕入れては、外国に船で輸送して生計を立てています。ある時、ビリーは思います。
「今までは、大きな事故もなく無事に積荷を輸送できてきたけど、これからも大丈夫だろうか?特に今度の積荷は量が多いし、万が一、嵐に会ったりして積荷を無くしたり、船が沈んだら大損害だな~。こりゃ、なんとかしないと。」

そこで頭の切れる貿易商人ビリーは、村の金持ちの男、ジョン(仮名)を訪ね提案します。
「ヘイ、ジョン!今度、外国に輸送をするのだが、ちょっと積荷の量が多くて、万が一の事態が怖いんだ。そこで君に提案だ。積荷の分の代金を肩代わりしておいてくれないか?
もちろんただではとは言わない。無事に届け先に積荷を輸送することができたら、君には肩代わりの代金プラス利子を付けてお金を返そう。ただし、もし僕の積荷が嵐で無くなったり、船が沈没したら肩代わりしてもらった代金は返さない。つまり、積荷が無事なら君は利子の分儲かる。万が一の時は、肩代わりしてもらったお金は僕のものだ。」

こちらも頭の切れる金持ちの男、ジョンは考えます。
(ムム、これは面白い話だ...。ビリーは今まで、100回以上船で積荷を運んでいるが、今まで一度も積荷を無くしたり、船が沈没したことはない。どう考えても、次の輸送も成功する確率が高いぞ。ということは、ワシはなにもせず利子の分儲かる...。)
「よし、ビリー。その話乗った!」

この話はフィクションなのですが、仕組み自体は史実です。古代ギリシャ時代に貿易商人が考え出した”冒険貸借“という制度で、のちの海上輸送の損害保険の元となっています。この制度では、ビリー=保険加入者、ジョン=保険会社となり、注目に値するのは、先にジョンがビリーに保険金(積荷の肩代わり代金)を払うという点。積荷が無事であれば、あとからビリーがジョンに保険料(利子)を払うという契約になっています。現代の保険とは、お金のやり取りの順序が逆です。頭のいい保険会社は、先に保険料を加入者から取れるように、長い歴史をかけて改善してきたのでしょう。

ところが、金銭消費貸借によって高利を受取ることはキリスト教的隣人愛に反するということで、1230年頃ローマ法皇グレゴリオ9世によっていわゆる利息禁止令が発令され、冒険貸借は禁止になってしまいました。その後利息禁止令の抜け道を求めて、冒険貸借はさまざまな形に仮装して続けられましたが、さらに進んで海上保険の制度として金銭貸借と危険負担の2つの機能のうち危険負担のみをとり、その代償として前もって保険料を支払うようになりました。このことから保険料をPremium(前もって支払う金額)と呼ぶようになりました。

そして17世紀中ごろのロンドンのテムズ川のほとりにコーヒー店ができます。
その立地条件から船主や商人、銀行家達の商談、社交の場となりました。
その店の店主、エドワード・ロイドさんは正確な海外情報をいち早く収集して店内の客に開示をした為、ますます繁盛していきました。
これがロイズ保険組合の始まりです。

現在は保険制度も発展をして公共性の高いものになっていますが、保険の始まりがほとんどギャンブルみたいな形でスタートしたことを考えると人間の知恵ってすごいな~なんて思います。

因みに保険用語にアンダーライティングという言葉があります。

これは保険会社が契約の申込があった場合、何でも引き受けるのではなく危険事情の比較的良質なものを選択しているのですがこれをアンダーライティング(危険の選択)といいます。

昔は契約の内容や引き受けの条件などが書いてある書類の下の方に引き受けても『いいよ!』っていう人に署名をもらっていたのがアンダーライティングの語源だそうです。